平成24年度全国発明表彰 受賞技術概要
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経済産業大臣発明賞
環境負荷低減に優れる重層型サーマルポジ平版印刷版の発明(特許第3949832号)
河内 幾生 | 富士フイルム株式会社 R&D統括本部グラフィック材料研究所主任研究員 |
発明実施功績賞
古森 重隆 | 富士フイルム株式会社 代表取締役社長・CEO |
従来の製版フィルムを用いた印刷版の製造方法に対し、CTP(Computer To Plate)とは、最終原稿となったデジタル信号を直接印刷版へ出力するものであり、①省資源、②省人化・短納期化、③印刷物の品質向上、といったメリットが挙げられる。但し、それの実現には専用のプレートが必要であり、特に明室で取り扱い可能な赤外線レーザ対応のプレートが強く求められていた。
古くから赤外線レーザの熱による可溶化技術は知られていたが、露光部と非露光部の溶解速度差が十分でなく、実用化されていなかった。
本発明は、高強度かつ高アルカリ溶解性の樹脂を中間層に採用することで、混合のない重層構造を形成し、感熱性層をアルミニウム支持体から隔離したことが特徴で、露光時の熱を有効利用して溶解速度差を拡大した。本技術を採用したプレートは多くの顧客に採用され、CTPの進展を加速した。また、溶解速度差の拡大に伴い、現像処理の安定化や廃液濃縮化も可能とし、フィルムレス化と併せて環境負荷を大幅に低減した。
図1 従来型(上)とCTP(下)の製版工程比較