平成24年度全国発明表彰 受賞技術概要
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日本経済団体連合会会長発明賞
溶接鋼構造物の疲労寿命を延伸する鋼板の発明(特許第4363321号)
誉田 登 | 住友金属工業株式会社 総合技術研究所 厚板条鋼研究開発部 主任研究員 | |
藤原 知哉 | 住友金属工業株式会社 総合技術研究所 厚板条鋼研究開発部 厚板グループ グループ長 | |
瀬田 一郎 | 住友金属テクノロジー株式会社 鹿島事業部 技術部 担当部長 | |
有持 和茂 | 住友金属工業株式会社 総合技術研究所 厚板条鋼研究開発部 シニア コンサルタント |
発明実施功績賞
友野 宏 | 住友金属工業株式会社 代表取締役社長 |
溶接鋼構造物に繰返し荷重が負荷されると、疲労損傷が発生し、最悪の場合には人命が危険に曝される。溶接部の疲労損傷は、鋼材では改善できない、と従来から信じられてきた。一方で、設計や施工による他の改善法は、既に効果が飽和していた。鋼材による改善には、産業界から長年に渡り強い開発ニーズがあった。
本開発では、最新製造プロセスによって、母材の疲労き裂進展抵抗性を高め、速度を従来鋼の1/2に安定して抑制した。ただし、強度・靱性・溶接性などは従来鋼と同等以上に維持している。次に、母材特性を維持しつつ、鋼材化学成分の最適化等により、溶接部における疲労強度の向上も達成した。
継手疲労特性を鋼材で初めて改善できた結果、溶接鋼構造物の疲労設計そのものを変えることができ、寿命延伸と軽量化とを同時に達成することが可能となった。使用鋼材を従来鋼から発明鋼に置換えることのみによって、地球環境保全、安全・安心な社会基盤維持に寄与できる。
図1 き裂発生抑制メカニズム | 図2 き裂進展抑制メカニズム |