平成29年度全国発明表彰 受賞発明・意匠概要(敬称略)
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21世紀発明奨励賞
高精細且つ質感まで再現する文化財復元技術の発明(特許第4559524号)
宮廻 正明 | 国立大学法人東京藝術大学 美術研究科教授/社会連携センター長 | |
ユウ ヨンゴ | 国立大学法人東京藝術大学 社会連携センター 特任研究員 | |
杉村 眞悟 | アトリエ画楽 経営 | |
染谷 香理 | 国立大学法人東京藝術大学 大学院文化財保存学保存修復日本画研究室 助教 |
21世紀発明貢献賞
澤 和樹 | 国立大学法人東京藝術大学 学長 |
本発明は、古くからの課題である「保存と公開」のジレンマ解消を目指したものである。
劣化する文化財の保存には非公開が最良の選択だが、公開されないと価値が共有されず、本来の存在意義が損なわれてしまう。本発明では、高精度なデジタル技術とオリジナルの質感を混在させることで、文化財複製の品質を飛躍的に向上させた。具体的には、デジタル下絵、基底材制作、極薄和紙への高精細印刷、日本画伝統の「裏打ち」、オリジナル素材の上塗りなど、先端技術と伝統技法の複雑な積層を成している。
デジタル技術による複製品は従来から制作されてはいるものの、画像や三次元形状などは再現される一方、高精細印刷用超微細粒子や3Dプリンタ向け光硬化樹脂等が文化財の組成成分と根本的に異なるため、TV画面上では本物そっくりに見えても、制作物を直接見ると「似て非なる」存在であることが一目瞭然だった。
文化財保護は経済活動とのコンフリクトが懸念される場合も多いが、本件技術は精度と質感を併せ持つ「保存(学術)と公開(経済)」を両立させる新たな手段として、国際社会から大きく期待されている。
図1 | G7伊勢志摩サミットにおけるクローン 文化財展示(出典:外務省ホームページ) |
図2 | クローン文化財の構造 (デジタル技術と伝統技法による多層を成している) |