平成28年度全国発明表彰 受賞発明・意匠概要(敬称略)
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経済産業大臣賞
糖尿病治療薬カナグリフロジンの発明(特許第4130466号)
野村 純宏 | 田辺三菱製薬株式会社 創薬本部 腎・内分泌科学創薬ユニット 主席研究員 | |
川西 英治 | 田辺三菱製薬株式会社 創薬本部 フロンティア疾患領域創薬ユニット 主席研究員 | |
植田 喜一郎 | 田辺三菱製薬株式会社 営業本部 製品育成部 腎・代謝推進グループ 主幹 |
発明実施功績賞
三津家 正之 | 田辺三菱製薬株式会社 代表取締役社長 |
2型糖尿病治療においてインスリンに依存した薬では膵β細胞の疲弊、低血糖、体重増加が見られる。我々は、過剰な糖を体の外に排出することでインスリンに依存せず高血糖を是正するというコンセプトを提唱した。
血中のグルコースは腎糸球体で濾過され、その大部分が近位尿細管に存在するナトリウム‐グルコース共輸送体2 (sodium glucose co-transporter 2, SGLT2)によって再吸収される。非経口投与にて、このSGLTを阻害し尿中に糖を排泄する天然物のフロリジンを修飾することによって、世界初の経口活性なSGLT2阻害薬T-1095を見出すことが出来た。
このO-グルコシドT-1095をルーツとして、ヘテロ環を有するC-グルコシドの探索をおこなった結果、強力なSGLT2阻害薬カナグリフロジンの発明に成功した。T-1095に比し顕著に尿糖排泄を促進した。臨床試験においては優れた血糖コントロールに加え、有意な体重減少、血圧低下が認められた。2015年5月現在世界65カ国で承認されている。世界で最も多くの患者に処方されているSGLT2阻害薬である。
図1 カナグリフロジンの発明 |
図2 SGLTによる腎での糖再吸収 |