平成28年度全国発明表彰 受賞発明・意匠概要(敬称略)
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特許庁長官賞
マルエージング鋼の製造方法の発明(特許第4692282号)
原 顕一郎 | 日立金属株式会社 冶金研究所 主任研究員 | |
高尾 秀実 | 日立金属株式会社 安来工場 製鋼部 主任技師 | |
三嶋 節夫 | 日立金属株式会社 安来工場 製鋼部 主管技師 | |
藤田 悦夫 | 日立金属株式会社 安来工場 技術部 主任技師 |
発明実施功績賞
髙橋 秀明 | 日立金属株式会社 代表執行役 執行役社長 |
本発明は、自動車の無段変速機(CVT)の主要部品である金属ベルトに適用されるマルエージング鋼の製造方法に関し、疲労強度を低下させる主たる原因となっていたチタン窒化物(TiN)を飛躍的に微細化できる技術である。特にTiNは硬く、サイコロ状の形状であるため、疲労強度を低下させる原因となっていた。
本発明では、TiNを無害化するため、一次溶解でMgを添加して溶鋼中で微細分散するMgOを形成させ、MgOを核とするTiNが微細に分散した消耗電極とする。その消耗電極を再溶解すると、再溶解中にTiNが溶解し、核のMgOはMgと酸素ガスに解離して除去される。これにより、従来では再溶解時に溶けきらないTiNが再溶解の凝固時に粗大化していたところを、10μm未満の微細なTiNとすることができた。
本発明により、従来問題となっていた介在物起因による材料の破断の問題も大幅に低減できた。本発明を適用して得られたマルエージング鋼は自動車の無段変速機に用いられ、CO2削減や燃費向上に寄与している。
図2 CVTベルト |