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発明協会の表彰事業

令和7年度全国発明表彰 選考経過報告

 令和7年度「全国発明表彰」の選考経過をご報告申し上げます。
 まず、本表彰の候補を、昨年7月に、朝日新聞などを通じて公募するとともに、全国各地の発明協会や関係諸団体に推薦をお願いいたしました。
 その結果、全国の学界や産業界などから、優れた発明や意匠、並びに功労者の方々の推薦を多く頂きました。
 推薦頂いた候補案件を、選考委員会において慎重に評価し、最優秀発明に授与する恩賜発明賞、それに続く内閣総理大臣賞や文部科学大臣賞、経済産業大臣賞などの各賞と、第二表彰区分の優れた発明に与える未来創造発明賞などをこれからご報告する通りに選定いたしました。

 まず、恩賜発明賞には、旭化成株式会社の船川明恭氏をはじめ2名による、『ニッケルを用いた電極長寿命化技術の発明』を選考しました。
 この発明は、食塩水を電気分解し、塩素や苛性ソーダを製造するための電解装置を長期に安定動作させる上で重要な電極の劣化を抑制するための発明です。
 電気分解の装置は、年に一度のメンテナンスや種々のトラブルの際に装置を停止する必要が生じますが、その際、通常とは逆向きの電流が流れ、金属電極が劣化する課題があり、その度に機械的な設備を用いて、逆電流を減らす面倒な対策が取られてきました。
 発明者は、装置内の電極上に多くの孔の構造を持つニッケルの膜を形成すると、逆電流が流れてもニッケルが酸化されて、水酸化物を形成するため、逆電流が消費され、電極劣化を防止することができることを明らかにしました。
 これにより、機械設備に頼ることなく、電解装置を長期間、安定して稼働させることが可能となり、世界各国の化学メーカーに導入されています。

 また、第二表彰区分における優れた発明に贈られる未来創造発明賞としては、国立研究開発法人 物質・材料研究機構の三成剛生氏をはじめ2名による発明、『耐酸化性を向上したプリンテッドエレクトロニクス向け銅インクの発明』を選びました。
 印刷技術を用いて電子回路や素子を製造するプリンテッドエレクトロニクスでは、これまで主に銀をベースにした導電性インクが使われてきました。
 本発明は、高価な銀の代わりに銅のインクを使う技術に関するものです。銅は銀と比べ安価で、導電性に優れる反面、酸化されやすく、インク化した際の保存性や安定性と、印刷後の導電性の保持に課題がありました。
 発明者は、大気の下でも安定な銅錯体にニッケル錯体を加えることにより、加熱還元後に銅配線をニッケルが覆うため、耐酸化性に秀でた銅インクが得られることを示しました。
 これにより、安価で高性能な銅インクが提供可能となったため、今後の普及が期待されております。

 なお、内閣総理大臣賞や文部科学大臣賞など他の賞を受けられた発明や意匠も極めて優れたものであり、ご紹介をすべきものですが、時間の都合で十分な説明ができません。皆様には、お手元の『功績概要』をご覧いただくようお願いいたします。
 本日、受賞された皆様には、これを機により一層研究開発や意匠の創作に邁進されますようご期待を申し上げます。
 以上をもちまして、簡単ですが選考経過の報告とさせていただきます。

令和7年7月1日

公益社団法人 発明協会

全国発明表彰 選考委員会
委員長  榊󠄀  裕之