令和7年度全国発明表彰 受賞発明・意匠概要(敬称略)
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未来創造発明賞
耐酸化性を向上したプリンテッドエレクトロニクス向け銅インクの発明
(特許第7531239号)
(特許第7531239号)
三成 剛生 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 高分子・バイオ材料研究センター グループリーダー 株式会社プリウェイズ 代表取締役社長 | |
李 万里 | 江南大学 インテリジェント製造学院 准教授 元 国立研究開発法人物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 NIMSポスドク |
未来創造発明貢献賞
宝野 和博 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 理事長 |
本発明は、従来のプリンテッドエレクトロニクスに用いられていた高価な銀インクの代替となることを目的とした、耐酸化性を向上した銅インクに関するものである。
銅は安価で導電性に優れるが、酸化されやすいという弱点があり、インク化した際の保存安定性や、印刷後の導電性維持が課題であった。
本発明では、大気下でも安定である銅錯体にニッケル錯体を添加することで、加熱還元後に銅配線をニッケルが自発的に被覆する銅・ニッケル錯体インクを開発した。導電性を担う銅は大きな粒子が、表面を覆うニッケルは緻密な膜が析出する機構を実現したことで、高い導電性と耐酸化性を両立した(図1)。
安価で高性能な銅インクが提供されることにより、電子基板の製造コストの大幅な削減が可能となり、IoTやウェアラブル機器などの普及の促進が期待される(図2)。さらに、銅はリサイクル性や環境負荷の面でも優れており、持続可能な製造に貢献するものである。
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図1 (a) 銅・ニッケル錯体インク (b) 銅・ニッケル錯体インクの印刷プロセス (c) 銅・ニッケル錯体インクのSEM/EDX測定結果 銅粒子の表面をニッケルが被覆することで耐酸化性が向上する |
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図2 様々な基板上に銅・ニッケル錯体インクを印刷したところ |