令和4年度全国発明表彰 選考経過報告
令和4年度「全国発明表彰」の選考経過につきまして、ご報告申し上げます。
本表彰の候補につきまして、昨年7月に、朝日新聞紙上などを通じて公募するとともに、全国各地域の発明協会をはじめ、関係諸団体に候補の推薦を依頼いたしました。
その結果、全国の学界や産業界など各界より、多くの優れた発明や意匠、並びに功労者の方々の推薦を頂きました。
審査に当たりましては、選考委員会において慎重な審議を行い、恩賜発明賞や内閣総理大臣賞、並びに未来創造発明賞など、各賞を選考いたしました。
恩賜発明賞に選考されたのは、富士通株式会社の本多達也氏をはじめ3名による、『音を振動・光で知覚する身体装着装置の意匠』でございます。
本意匠は、空気を伝わる音の大きさを身体に装着できる小型の装置を用いて振動や光の強さに変換することで、音のリズムなどの特徴を身体で感じることを可能とするアクセサリー型の知覚装置に関するものです。
聴覚に支障のある方々と協働で開発し、全国8割以上のろう学校に導入され、発話練習やリズム練習に活用されています。また、映画や音楽ライブなどのイベントにおいて、聴覚の如何に係らず、一体感や臨場感を感じることを可能としました。
また、未来創造発明賞には、国立研究開発法人物質・材料研究機構の樋口昌芳氏をはじめ3名による『超低消費電力型多彩エレクトロクロミック材料の発明』を選考いたしました。
本発明は、電気化学的酸化還元反応により、着色状態と透明状態が切り替わるエレクトロクロミック特性を有する金属を含むメタロ超分子ポリマーと、調光デバイスに関するものです。
ポリマー内の金属や配位子の種類を変えることで、多彩な色に調整可能な上に、メモリ性もあり、電源を切っても着色状態が維持されるため低消費電力性に優れ、10万回を超える繰り返しにも耐える安定性を備えています。
この新材料の量産と販売、調光ガラスデバイスの製造に成功しており、国内外での実用化と普及の推進が期待されます。
他の受賞発明や意匠につきましても優れたものばかりであり、ご紹介すべきと存じますが、詳細はお手元の『功績概要』をご覧いただければと存じます。
本日、受賞された皆様には、これを機に、より一層研究開発や意匠の創作に邁進されますようご期待申し上げます。
以上をもちまして、簡単ではございますが選考経過の報告とさせていただきます。
令和4年6月30日
公益社団法人 発明協会
全国発明表彰 選考委員会
委員長 榊 裕之