公益社団法人発明協会

現代まで

デジタルカメラ

概要

 電子スチルカメラは、レンズを通して入った光をイメージセンサー(撮像素子)によりアナログ電気信号に変換して記録・出力するカメラである。このうち撮像素子からの電気信号をアナログ・デジタル変換器でデジタル化し、画像処理エンジンにより画像データとして記録するのがデジタルカメラである。1990年代に登場したデジタルカメラは、その後急速にフイルムカメラに代替し、デジタル家電の中の重要なもののひとつとなった。

 電子スチルカメラの開発は1970年代に始まり、80年代には我が国企業によりアナログ電子スチルカメラとして実用化されたが、高価で同時期に市場に投入されたビデオムービーカメラとの競合もあって市場形成には至らなかった。こうした状況から、参入企業の中にはその開発体制を縮小するものもあったが、画像記録の「化学から電気」の流れを信じる企業の技術者たちは、デジタル化による新たな展開を目指していた。

 そのなかで、デジタルカメラの市場形成の引き金となったのが、1995年にカシオ計算機(以下「カシオ」と呼ぶ)が発売した民生用デジタルカメラ「QV -10」である。QV -10は、それまでの電子スチルカメラの最大の課題であった低価格化を実現するとともに、液晶モニターを標準装備し、撮影した画像をその場で確認することを可能とし、また、同じ年に発売されたマイクロソフト・ウインドウズ95搭載のパソコンとの接続を可能としたことから、爆発的ヒット商品となった。

 これをきっかけにデジタルカメラ市場が立ち上がると、光学機器メーカー、フィルムメーカー、家電メーカーなどが次々にこの市場に参入し、激しい市場競争を展開し、デジタルカメラの性能及び機能が飛躍的に改善・強化されていった。更にパソコンのマルチメディア化やインターネットサービスの低料金化・高速化が急速に進んだこともデジタルカメラ市場の成長を加速した。

 1999年に509万台であったデジタルカメラの出荷台数は、10年後の2008年には1億1976万台にまで増加した1。この過程で、2002年にはフイルムカメラの出荷台数を上回り、カメラ市場の主役が交代した。我が国のデジタルカメラは世界市場でも圧倒的強さを示しており、現在でも90%近くのシェアを維持しており、更にデジタル一眼レフカメラについては100%近くが日本ブランドとされる2

 デジタルカメラは、第二次世界大戦後に世界のフイルムカメラ市場をけん引した日本の光学機器業界、フィルム業界、半導体業界及び家電業界の技術力、ブランド力と新たなビジネスモデルにより構築されたイノベーションである。


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