公益社団法人発明協会

現代まで

リチウムイオン電池

概要

 リチウムイオン電池は、正極活性物質としてリチウムイオン含有金属酸化物、負極活性物質としてリチウムイオンを吸蔵・離脱し得る炭素質材料を用いた充電可能な二次電池(充電が可能な電池)で、現在では、スマートフォン、ノートパソコン、ビデオカメラ、ハイブリッド自動車、産業機械、航空機等様々な分野において不可欠な電源となっている。

 リチウムイオン電池開発の大きな一歩は、1979年に英国オクスフォード大学教授のジョン・グッドイナフ(後にテキサス大学。以下「グッドイナフ」と呼ぶ)と同大学に留学していた東京大学の水島公一(後に東芝。以下「水島」と呼ぶ)により、電極活物質としてリチウムコバルト酸化物が利用できることが発見されたことによる。次いで旭化成工業(現 旭化成、以下「旭化成」と呼ぶ)の吉野彰博士(以下「吉野」と呼ぶ)らは、グッドイナフらが発見したリチウムコバルト酸化物を正極活物質とし、白川英樹教授(以下「白川」と呼ぶ)が発見したポリアセチレンを負極活物質とした二次電池を試作し、リチウム二次電池としての効果を確認した。さらに、ポリアセチレンに代えて、特定の結晶構造を持つ炭素材料を負極活物質とする二次電池を開発し、現在のリチウム二次電池の基礎を確立した。一方、独自のアプローチにより開発を進めていたソニーは、西美緒(以下「西」と呼ぶ)らによりハード・カーボンを負極活物質とするリチウム二次電池を開発し、1991年にソニー・エナジー・テックにより世界に先駆けて出荷を開始した1。先行して大規模な設備投資を行ったソニーに続いて、1992年には旭化成が東芝・東芝電池との合弁会社エイ・テイーバッリーを設立して生産を開始し、1994年には三洋電機・松下電器産業(現 パナソニック。以下「パナソニック」と呼ぶ)らによる生産も開始され、20世紀の世界のリチウムイオン市場は日本製品が圧倒するものとなった。

 リチウムイオン電池は、それまでの二次電池を大きく上回る4V以上の起電力を持ち、エネルギー密度が大幅に向上したことから、二次電池に最も求められる小型・軽量化を可能とした。これにより、それまでの主役であったニッカド電池やニッケル水素電池などを瞬く間に凌駕し、小型二次電池の主役となった。また、ビデオカメラ、ノートパソコン、携帯電話等、大容量二次電池を求める製品が次々と出現したこともリチウムイオン電池市場を急激に拡大させるものとなった。2015年のリチウムイオン電池の世界市場は2兆1502億円に達した2

 2014年、全米技術アカデミーは、「小型で軽量のモバイル電子機器を可能としたリチウムイオン二次電池の設計」の功績により、元ソニーの西、旭化成の吉野らに、「工学のノーベル賞」とも言われるチャールズ・スターク・ドレイパー賞を授与した。

図1 SONYのリチウムイオン二次電池(初出荷モデル)

図1 SONYのリチウムイオン二次電池(初出荷モデル)

画像提供:電池工業会


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