公益社団法人発明協会

安定成長期

IHクッキングヒーター

概要

 IHクッキングヒーターは、パナソニックを中心とした日本の家電メーカーによってもたらされたイノベーションである。従来、一般家庭においては、ガスコンロを用いた加熱調理が支配的であった。他方で、IHクッキングヒーターは、誘導加熱(Induction Heating)の原理を用いて、コイル状の導線に交流電流を流すことで発生する磁力線を金属鍋に当て、鍋自体を発熱させることによって加熱調理を行うものである。これは、従来の「火」による調理ではなく、「電気」による調理である。

 IHクッキングヒーターは従来のガスコンロに比べて、加熱効率性、火力の制御性、安全性、清潔性など様々な面で利便性を有している。日本における誘導加熱を用いた「電気」による調理は、1974年に三菱電機は低周波型、パナソニックが高周波型のIH調理器を商品化したことによって始まった。

 初期のIH調理器は、重量が大きく高価格だったため、一般家庭向けではなかった。しかしパナソニックは、電流を高周波に変換する高周波インバーターの小型化、低コスト化を積極的に推し進め、1978年には一般家庭で使用可能な卓上型IH調理器の商品化に成功した。また1988年には、誘導加熱の原理を炊飯器の釜に応用することによって、世界で初めてIHジャー炊飯器を開発した。

 卓上型IH調理器によって一般家庭で利用されるようになったが、本格的な調理を行うほどの十分な火力はなかった。更なる技術開発によって様々な技術的課題が解決され、1990年には200V対応のIHクッキングヒーターが開発された。これによって、家庭において電気による本格的な調理が可能になった。更に2002年には、IHクッキングヒーターで調理可能な金属鍋の材質が、鉄やステンレスに限られるという課題に対応して、あらゆる材質の金属鍋の加熱調理が可能なオールメタル加熱型IHクッキングヒーターも商品化された。これを機に、IHクッキングヒーターは一般家庭に広く普及するようになった。


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