公益社団法人発明協会

安定成長期

酵素入りコンパクト洗剤(アタック)

概要

 戦後、高度成長期に入った日本では電気洗濯機が急速に普及し、これに使用される合成洗剤の需要も右肩上がりで増大してきた。しかし、農業用水や都市排水に含まれるリン分によって引き起こされる河川、湖沼などでの富栄養化が社会問題化し、リン酸を使用する洗剤にも社会の厳しい目が向けられるようになった。洗剤メーカー各社は、低リン化を進めるとともに、これがもたらす洗浄力の減少に対応するため様々の試みを行うなかで酵素を助剤として使用する技術の開発をも進めていった。ライオン油脂(現 ライオン)が酵素を使用して製造し1979年に発売した「トップ」は、この課題を解決するうえで画期的な商品となった。

 一方、当時世界を襲った2度の石油危機は、消費者マインドを強い節約志向と省資源重視のライフスタイルへと変えていった。洗剤メーカーはこれへの対応として小型の洗剤を販売したが、第一次石油危機後の最初のコンパクト化は不発に終わり、むしろ70年代後半以降は「お徳用」な特大サイズの箱入り洗剤が主流となっていた。第二次石油危機を経て、1987年、花王は従来の4分の1の容量の酵素入りコンパクト洗剤「アタック」を発売した。「スプーン1 杯で驚きの白さ」というキャッチフレーズで販売されたアタックは、販売開始後、成熟市場だった合成洗剤市場に強いインパクトを与え、以後コンパクトな洗剤が市場を制覇するところとなった。花王はこの小型化にあたって、プリンターに使用されるトナー製造で蓄積された粉体加工技術を応用して洗剤粒子の体積を小さくし、また、アルカリセルラーゼという酵素を配合することにより洗浄力を大幅に向上させた。アルカリセルラーゼは、花王が独自にスクリーニングを行い、1985年に発酵生産体制を整備させたものである。

 日本から始まったコンパクト化への変化は、海外でも一般化し、洗濯に関わる使用スタイルを変更させ、軽量で洗浄力の強い酵素入りコンパクト洗剤は世界の主流となった。

1987年に販売されたアタック

1987年に販売されたアタック

(画像提供:花王)


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