公益社団法人発明協会

安定成長期

オーロラビジョン

概要

 オーロラビジョン(海外名Diamond Vision)は、1980年に米国のドジャースタジアムに設置され、MLBオールスターゲームにおいて、世界初の屋外用フルカラー大型映像表示装置として華々しくデビューした(図1)。当時、多数の人々に情報を提供する手段として、白熱電球を配列した電光掲示板が使われていた時代である。スポーツの観戦においては、人々が自宅のテレビでスポーツを楽しむことができるテレビ時代でもあった。オーロラビジョンは、このような技術的・時代的背景の中、オイルショックの影響で事業の継続に危機感を覚えた三菱電機長崎製作所の船舶技術者たちが生み出したイノベーションである。

 オーロラビジョンは、技術的には、三菱電機における京都製作所のブラウン管技術とプラズマディスプレイへの映像表示の研究で先行していた中央研究所(当時)の画像処理技術をベースに開発された。白熱電球に代わる新たな発光素子としてCRT(Cathode Ray Tube)の技術を応用した赤・青・緑の3種類の光源管を開発し、これらを配列してスクリーンが構成される。光源管は、カラーテレビと同等の蛍光体が使用され、発光効率が高く、消費電力を大幅に削減できる。応答速度も格段に速く、動画表示にも適している。こうしてカラーテレビ並みの色再現とスムーズな動画表示により、低消費電力で高画質の屋外用フルカラー大型映像表示装置オーロラビジョンを実現した1

 ドジャースタジアムでは、オーロラビジョンの設置に合わせて、各種の映像機器をコンピューターで制御するコントロールルームを製作し、魅力的なファンサービスを提供する運用ソフトを作り上げた。コンテンツは、チームの応援、観客を盛り上げるための効果的なアニメーションや文字情報、ファインプレイのクローズアップやリプレイ、他球場における試合経過などである。オーロラビジョンは、ドジャースタジアムにおいて、選手、観客、球団が一体となって応援する新しい野球の楽しみ方を提供し、テレビ放映により減少していた観客を球場に呼び戻すことにも役立った。こうしてオーロラビジョンはスタジアムへの集客と観客を楽しませる手段として新たな市場を創出した。

 オーロラビジョンは、市場の成長とともに参入した各社との競合が始まり2、野球場から競馬場、各種スポーツ施設に普及し、観客を盛り上げる手段として定着した。さらに、新たな発光素子Flat Matrix CRT(FMCRT)の開発やLED(Light Emitting Diode)の適用などの技術革新を経て解像度を中心に画質が飛躍的に向上し、屋内用を含めてスポーツ観戦から広告、コンサートなどの各種イベントへと用途が拡大している3。今では屋内外において映像という共通の情報で人々に感動を提供する手段として重要な役割を果たしている。

 なお、オーロラビジョンは、社会の発展に多大な貢献をし、開発から少なくとも25 年以上経過した歴史的イノベーションを認定するIEEE のマイルストーンに認定されている。

図1 ドジャースタジアムのオーロラビジョンと光源管

図1 ドジャースタジアムのオーロラビジョンと光源管

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