公益社団法人発明協会

安定成長期

三元触媒システム

発明技術開発の概要

 自動車用三元触媒システムは、その後も進化を続けた。

 1991年にトヨタがキャタラー工業、豊田中央研究所の協力を得て開発した「NOx吸蔵還元型三元触媒システム」は、排気系の構造を複雑にすることなくNOxを効率よく吸収し、必要に応じて吸収されたNOxを放出することができる排気浄化システムであった。

 この発明では排気通路内にNOx吸収材を配置し、運転中は常に排出ガスがNOx吸収材と流通する。流入する排気ガスがリーンであるときにはNOxを貴金属上で酸化し、吸蔵材と反応して硝酸塩を生成して触媒上に吸蔵し、逆にNOx吸収材に流入する排気ガス中の酸素濃度が低下してリッチとなった際には、三元触媒の機能により急増したNOxを窒素に還元して放出するものである。

 この浄化性能を最大限に引き出すものとして新たに「空燃比制御法」が開発された。この制御法では、アイドル付近では空間速度が小さくNOx還元率が高くなり、また燃料損失も小さいことに着目し、減速タイミングに応じて空燃比をリッチにする制御が行われる。実際には、リーン条件が長時間続く場合もあることから、その時点でのNOx吸蔵量と触媒が吸蔵できるNOx最大容量とを運転条件から推定し、NOx吸蔵量が最大に近づくと自動的に短時間だけ空燃比をリッチに切り替え、NOxを還元浄化した後、再びリーン状態に戻すという制御を行う。リッチ化による「リーン」と「リッチ」とのトルク段差については、空燃比と点火時期の制御により許容できるレベルに調整される。

 この浄化性能により、オートマチック車のリーンバーン運転領域を拡大し、リーンバーンによる燃費効果を倍増させた。NOx吸蔵型三元触媒システムは、1994年以降、トヨタのカリーナやコロナに搭載され商品化された35

 NOx吸蔵還元型三元触媒システムは1999年に全国発明表彰で恩賜発明賞を受賞した。 


TOP