公益社団法人発明協会

アンケート投票トップ10

ハイブリッド車

概要

 自動車はとりわけ先進国において人々の生活に欠かせない乗り物となっており、また自動車産業は日本や米国、欧州諸国における経済の中で大きな位置を占める産業の一つである。自動車産業が勃興したのは19世紀末のことであるが、自動車が広く一般大衆に受け入れられるきっかけとなったのは、1908年に販売を開始したフォード・モーター社のT型フォードであった。T型フォードの発売以来、自動車産業においては大量生産体制と標準化が積極的に推進されるようになり、動力源としてはガソリンエンジンが主流になっていった。

 しかし、大気汚染などの公害が問題となり排出ガス規制が強化された1960年代以降はこの規制をクリアするエンジンの改良に加えて新たな動力源の開発も追及されてきた。当初は一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)など有害ガス対策が中心であったが、1980年代以降は炭酸ガス(CO)排出による地球温暖化問題が全世界的な課題となり、これをも抑制するエンジンの開発が急務となってきた。現代における自動車の新たな動力源の代表格の一つが、ハイブリッドエンジンである。ハイブリッドエンジンとは、内燃機関と電気モーターの二種の動力源を用いたエンジン装置のことである。これを搭載したハイブリッド車(HV)はトヨタ自動車(以下「トヨタ」と呼ぶ)によって世界で初めて乗用車として量産化された。トヨタは、1960年代から排出ガス規制を受けて、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)、そしてハイブリッド車など新しい動力源による自動車を模索してきた。その中で、燃費効率向上と排出ガス減少を両立できる動力源としてハイブリッドエンジンにたどり着き、1997年に「トヨタハイブリッドシステム」を発表した。このシステムを搭載した「初代プリウス」は同年12月に発売され、翌年に年間販売台数1万台を超えるヒット商品となった。さらに、2003年に発売した「2代目プリウス」は年間最高28万5000台(2008年)、2009年に発売した「3代目プリウス」は年間最高50万9000台(2010年)と、モデルチェンジをするたびに目覚ましいほどの成長を遂げた。2013年6月時点での累計販売台数は300万台を超えるまでになり、ハイブリッド車という新市場を切り開いたといえる(プリウスの年間販売台数推移を後掲図1に示した)。また、トヨタに続いて本田技研工業(以下「ホンダ」と呼ぶ)も独自のハイブリッドシステム「ホンダIMA(インテグレッド・モーター・アシスト)システム」を搭載した「インサイト」の開発でハイブリッド車市場に参入し、この2社によるイノベーションの推進がハイブリッド車市場を牽引している。

初代プリウス

初代プリウス

画像提供:トヨタ自動車

インサイト

インサイト

画像提供:本田技研工業


TOP