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ウォシュレット®

概要

 1980年、東陶機器(以下「TOTO」と呼ぶ)は温水洗浄便座「ウォシュレット®」を発売した。ウォシュレットは、日本人がトイレに対して有していたマイナスイメージを大きく変化させることとなったイノベーションである。

 公衆衛生の向上は、古くから疫病予防や生活環境の改善から為政者にとっては大きな課題であった。特に都市化の進展は、上下水道の整備と並んで排泄物の処理も地域の自治体が担う重要なインフラストラクチュアとなってきた。水洗トイレはこのインフラの整備とともに戦後日本でも急速に普及していったシステムである。

 一方、日本人は長くトイレとは不潔なもの、忌むべきものであるとの固定的な観点を有していた。「御不浄」という言葉が端的にそれを物語る。ウォシュレットの登場は、衛生面での格段の清潔性向上にとどまらず、こうしたトイレに関するマイナスのイメージを変え、むしろ快適感を与える空間へと変化させた。

 ウォシュレットを生み出したTOTO は、明治時代に創業された日本陶器(現 ノリタケカンパニーリミテド、以下「日本陶器」と呼ぶ)を母体とし、そこから独立して衛生陶器の研究開発・販売に従事してきた。ウォシュレットの開発は、この戦前からの長い歴史的取組によって衛生陶器及び水栓金具に係る技術的な知見を多数有していたこと、導入品であった洗浄便座を参考にしつつ、自社内での技術開発及び外部からの技術移転によって、従来の導入品より優れた洗浄便座の開発に成功したことによる。そして、その爆発的な人気は、市場に新たな付加価値を伝播させるために、従来とは異なるマーケティング手法を採用したことなどによって実現したものであった。

 1980年の発売後、ウォシュレットは着実に販売台数を伸ばし、現在、国内での世帯普及率は70%を超えるほか、米国、欧州、中国など、国外の多くの国々でも販売を行っている。

初代ウォシュレット

初代ウォシュレット

画像提供:TOTO


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