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新幹線
概要
日本国有鉄道(以下「国鉄」と呼ぶ)が1964年10月1日に営業運転を開始した「新幹線」は、我が国の鉄道技術の粋を結集して世界で初めて実現した高速都市間鉄道システムである。
新幹線システムは、戦前の弾丸列車構想以来それまでに蓄積された機械・電気・土木・通信等の鉄道技術の成果を進展させるとともに、最新の科学技術を用いて統合したものであり1、東京―大阪間を最高時速210km/h、所要時間3時間10分(開業時4時間)という世界最高の鉄道システムを実現した。特に、高密度・大量輸送性2、正確な運行スケジュール、開業から50年にわたり乗客死亡事故ゼロという安全性、鉄道の利便性を一段と高め、多くの人の移動に貢献し、我が国の経済活動を支える大動脈となった。
技術的にみると、新幹線システムは、高速列車運転の基本となる交流電化技術と各部品のエレクトロニクス化を基に、車両では最適な先頭形状の採用や車体の平滑化による走行抵抗の低減並びに軽量化技術、軌道では、ロングレール・高速通過の振動を防止するノーズ可動分岐器、架線では高速大量運転に耐える合成コンパウンド架線の技術、運行管理では高速運転を安全に行う自動列車制御装置(ATC)や多数の列車を能率的かつ安全に集中制御する列車集中制御装置(CTC)などを備えたものである3。
これらの技術は短期間の東海道新幹線プロジェクトの中で開発されたものだけでなく、それ以前から進められていた国鉄本社、鉄道技術研究所、民間鉄道会社、鉄道車両メーカー等の絶え間ない高速鉄道への取組の中で培われたものでもある。
新幹線の成功は、鉄道による都市間高速輸送システムの有効性を国内だけでなく、世界的にも再評価させるものとなり、フランス、ドイツをはじめとする高速鉄道網の実現を促すものとなった。
2000年、米国に本部をもつIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)は、世界で最も先進的な電気・機械・鉄道技術で設計された都市間高速鉄道システムとして、地域社会や産業の発展に偉大な貢献をしたイノベーションに与えられる「IEEEマイルストーン」に「東海道新幹線」を選定した4。
画像提供:久保 敏