安定成長期
フラッシュメモリ
概要
デジタル情報の記憶デバイスは、磁気テープやハードディスクなど長く磁気系のそれが主流であった。他方、1970年に米国インテル社によって半導体メモリのDRAM(Dynamic Random Access Memory)が発明され、その画期的な小型化、低価格化によって新たな一時代をもたらすところとなった。このDRAM全盛期の1980年代に東芝によって開発され、90年代後半から急速に普及が進み始めた半導体メモリがフラッシュメモリである。記憶デバイスには、読み書きの高速性、省エネ性、低価格性とともに磁気メモリにあってDRAMにはない不揮発性(電源を切っても記録が消えない)も重要な要素であり、これらの点で優れた特性を持つフラッシュメモリはとりわけ携帯電話やデジタルカメラのSDカードなどで広く普及するとともに、その高機能化に伴いPC・サーバーなど磁気メモリが主力の分野でも活用されつつある。
磁気メモリの持つ不揮発性を半導体メモリでも実現するための開発は、国際的に展開されてきた。東芝でも70年代からその取り組みが始められたが、1980年、舛岡富士雄によって特許出願された3層多結晶シリコン(消去ゲート)型EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)が一つの画期となった。NOR型と呼ばれるものである。それまでの不揮発性の小型記憶デバイスはインテルによって開発されていたEPROM(Erasable Programmable Read -Only Memory)などであったが、記憶の消去には紫外線の長時間照射が必要であり、また、コスト面でも課題があった。1984年に公開された舛岡らが開発したそれは電気的に一瞬にして消去できることからフラッシュメモリと名づけられ、その呼び名は世界に定着していった。その後、舛岡ら東芝のチームは、1987年、更に高集積化が可能なNAND型フラッシュメモリを開発、公表した。NAND型フラッシュメモリの量産化は、困難を極めたが、要素技術の革新により量産化を実現し、併せて仕様の画一化等に向けた努力によって国際標準化をも達成した。現在はこのNAND型フラッシュメモリとNOR型フラッシュメモリが併存しつつ量的にはNAND型が世界市場でのフラッシュメモリの主力となっている。半導体メモリの主力は現在DRAMとともにフラッシュメモリになりつつあり、更にすすんで近年はDRAM市場でもフラッシュメモリが代替する分野が多くなっている。
NAND型フラッシュメモリ
画像提供:東芝