公益社団法人発明協会

安定成長期

プレハブ住宅

概要

 プレハブ住宅とは、可能な限り工場で部材を生産、加工し、組立を行う方式で建築される住宅のことで、「prefabrication」の略である。部材の多くは工場で造られることから「工業化住宅」とも呼ばれる。

 産業革命以降、多くの国で工場での大量生産方式による住宅供給への取組がなされてきた。この間、数々の優れた研究成果等がもたらされたが、それが産業として大きく発展したのは第二次世界大戦後の日本が唯一である。この背景には、日本においては狭い国土の中で住宅建設が旺盛に行われているのに対し、欧州各国では住宅建設戸数が少なく、また米国のように広大な国土で分散している国では工場からの資材輸送コストという面でメリットが小さいことがある。 

 一方、戦後日本では深刻な都市部での住宅不足に対して、従来工法による供給では対応しきれず、工場生産による大量供給体制の構築に向けた取組が政策面からも促進された。1950年代から公共機関が供給する集合住宅では、政府や日本住宅公団が民間の建設業界と共同で標準設計によるプレキャストコンクリート工法を開発した。1960年代半ばから相次いでベンチャー企業精神あふれる民間企業によって多様なプレハブ建築工法が考案され、その工法はそれぞれ異なるものであったが、互いに切磋琢磨するなかで市場を広げていった。1960年代末には年間10万戸以上ものそれを供給するまでになり、一大産業として認知され、新たに化学、自動車、電機産業等からの参入も始まった。

 しかし、1973年の第一次石油危機は住宅需要の大きな落ち込みを招き、とりわけプレハブ住宅業界を含む住宅産業は深刻な低迷期を迎えるところとなり、多くの企業が撤退していった。これに対して、量から質への転換、そして更なるコストダウンを目指して企画提案型住宅やユニット工法といった新タイプの技術、構法が考案され、それはより付加価値の高い高級感のある住宅を実現していった。各社はその技術力、デザイン力を駆使した製品を発表し、耐久消費財のように宣伝と代理店等の営業努力をもって販路を拡大するビジネスモデルを強化、確立させていった。プレハブ住宅産業は、こうして利用者の信頼を高め、その製品の耐震性、省エネ性、耐久性など高品質といったイメージを広め、ブランド名をもって顧客の安心感を呼ぶ商品として定着させた。近年には、海外への進出も進められている。

 1963年から2015年までの累積で約960万戸のプレハブ住宅が建設された(プレハブ建築協会調べ)。


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