安定成長期
家庭用カムコーダ
概要
誰もがテレビに映るようになった。これが家庭用カムコーダによる画期的な出来事であった。
1975年にベータマックス、翌1976年にVHSと家庭用ビデオが発売され、テレビ番組が録画できるようになった。並行して、ポータブルビデオカセットレコーダーとビデオカメラが開発され、自ら映像を撮ることができるようになった。しかし、当時は、ビジコンやトリニコンという真空管式の撮像管を用いたビデオカメラであった。ビデオカメラとポータブルビデオカセットレコーダーを別々に持つ必要があり、それぞれ、カセットレコーダーが電池を含めて約10 kg、ビデオカメラも4.5 kgという、非常に重い、大変高価なものであった。したがって結婚式や特別なイベントのときに固定して撮るということが主な使い方であった。
その後、小型軽量化が図られ、ソニーがビデオカメラとビデオカセットレコーダーの一体型機を開発、これをベータムービー(BMC-100)という名称で1983年に発売したのが家庭用カムコーダの第一号機である。録画専用に機能を絞り、カメラのグリップにバッテリーを内蔵するというような工夫が施された。同時期、1984年に日本ビクターがVHS方式の一体型機(GR-C1)を発売している。これはVHSのカセットにアダプター形式で収めることができるVHS-Cという小型のカセットを用い、録画時間を20分に絞ることで小型化に成功した。これらのビデオとカメラの一体型カムコーダの出現により、ビデオを撮るという文化が身近なものになった。
この流れを大きく変えてカムコーダを爆発的に普及させたのが、撮像管に代わる、半導体イメージセンサーであるCCDの開発と、メタルテープを使って記録密度を向上し、小型化を図った8mmビデオフォーマットの登場である。8mmビデオフォーマットは世界127社統一規格とうたわれ、ソニーがCCD-V8を1985年に発売。その後、ハンディカムの名称で次々に小型機を開発。特に1989年に発売されたパスポートサイズ、重さ790gのCCD-TR55は空前の大ヒットとなった。以降、業界はHi8対応、カメラの3CCD化等の高画質化に進展していくが、一方で、カムコーダはデジタル化の開発が進められる。
1994年、HDデジタルVCR協議会が家庭用デジタルビデオの規格DVフォーマットを策定、以降、デジタル化が進行、さらにハイビジョン対応等、高画質化が進展した。その後記録媒体はテープからHDDや半導体メモリーへと多様化、また撮像素子もCCDからCMOSへ、さらに4K対応等カムコーダの進化はとどまることを知らない。
出典:ソニー