安定成長期
X線フィルムのデジタル化
概要
1970年代初頭と言えば、電子工学技術の発展のなかで、X線CTやMRIなど画像診断に関する新しい技術が次々と誕生した時代である。ところが、一般的なX線画像診断はデジタル化の流れから取り残されていた。このような状況のなかで富士フイルムは、アナログの写真フィルム事業を長らく続けていたにもかかわらず、X線画像診断のデジタル化の開発にいち早く乗り出し、1983年に世界で初めてCR方式 (Computed Radiography)の導入によってこれを実現した。
CR方式とは、X線によって得られた画像情報をイメージング・プレートに記録し、平面型スキャナーによってその情報をデジタル化し、更にコンピューター処理することによって診断可能な画像情報にするものである。従来のアナログ式のX線写真では、X線像を感光する写真フィルムが、X線像の記録・表示・保存の役割を担っていた。しかし、CR方式では、これら三つの機能を分解し、それぞれの機能を最適なデバイスに分担させることによって、デジタル化を実現させている。
1990年代に入るとDR(Digital Radiography)方式がキヤノンによって開発された。X線を蛍光体で光に変換し、その光を検出する媒体に、非晶質状態の半導体であるアモルファスシリコン(以下「a-Si」と呼ぶ)を用いる。a-Si薄膜で撮像素子を構成し、この撮像素子で蛍光を光電変換、さらにこの電気信号を即座に増幅、アナログをデジタル変換する。これによって撮影後すぐにモニターで画像を確認できるという即時性を実現することとなった。
こうしたCR式やDR方式によってX線フィルムをデジタル化することで、診断精度の向上や診断画像の保存・伝達・管理の効率性は著しく高まり、またコンピューターとの接続によって画像のネットワーク化をも実現し、病院間での情報の共有が可能となった。