安定成長期
三元触媒システム
概要
三元触媒は、ハニカム状コージライト担体に多孔質アルミナを塗布し、白金等の貴金属を含侵担持したもので、ガソリン車の排出ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO) 及び窒素酸化物(NOx)を同時に除去するものである。三元触媒ではHCとCOの除去は酸化により行われるが、NOxの除去は還元により行われるため酸素の少ない領域が求められる。このため、三元触媒が有効に機能するためには、エンジンに供給される空気とガソリンを理論空燃比前後の極めて限られた範囲内に制御することが必要となる。特に、常に環境が変化する移動体においては、高い信頼性と耐久性を確保することが不可欠であった。このため、自動車用三元触媒システムの実現には、触媒の開発に加え、排出ガス中の酸素濃度を検知する酸素センサー、検知した酸素濃度をもとにガソリン吐出量を制御するエンジン・コントロール・ユニット(以下「ECU」と呼ぶ)、及び正確な量のガソリンをエンジンに供給する燃料噴射装置の開発が求められた。
1970年以降、日米を中心として自動車排出ガス規制が一段と厳しくなると、排出ガス除去技術は自動車メーカーの命運を懸けるものとなった。当時我が国の乗用車市場の8割以上のシェアを占めていたフルラインメーカーも、量産時の信頼性を確保しつつ、全車種で優れた性能と耐久性を備えた排出ガス対応技術が求められた1。
トヨタ自動車(以下「トヨタ」と呼ぶ)及び日産自動車(以下「日産」と呼ぶ)は欧米で開発されたばかりの三元触媒システムに着目し、グループ企業の協力を得つつ、材料技術、制御技術、電子制御型燃料噴射技術を駆使してその開発を進めた。両社が開発した三元触媒システムは、1977年にトヨタ「クラウン」に搭載され市場に投入され、次いで日産の「プレジデント」が登場した。さらに、1979年に「セドリック」に搭載された三元触媒システムは、初めてマイコンで制御されるECUを採用し、その性能を飛躍的に向上させた。
三元触媒システムの開発は、当時世界で最も厳しいといわれた我が国の1978年規制が対応可能なものであることを実証し、世界の自動車排出ガス対策の標準技術となり、ほとんどの自動車メーカーに採用された。また、三元触媒システムが実現したセンサーとコンピューターによるデジタル制御システムは、その後の自動車のエレクトロニクス化の先駆けともなった。
三元触媒システム
画像提供:トヨタ自動車