安定成長期
電力用酸化亜鉛形ギャップレス避雷器
発明技術開発の概要
研究開発の当初、弱電用バリスタを電力用のZnO素子として使用するためには次のような課題の解決が求められた。
①電圧電流非直線特性の改善
②放電耐量の向上(沿面フラッシュオーバーを防ぐ側面絶縁コーティング)
③大口径化及び量産化
④課電寿命推定法の確立8
(1)電圧電流非直性特性の改善
ZnO素子の非直線特性の改善には、原料配合の調整が不可欠であった。様々な添加物の効果及び複数元素の相互作用を調査する試作と電気的評価試験を繰り返し行い、非直線特性を改善した。ZnO素子とSiC素子の電圧電流非直線特性を以下に示す。
ZnO素子とSiC素子の電圧―電流特性
出典:明電舎「電力用酸化亜鉛形ギャップレス避雷器(MOSA)の歩み」明電時報346号 No.1(2015年)8頁
(2)放電耐量の向上
避雷器には優れた放電耐量特性が必要であり、ZnO素子の側面絶縁強化は必須であった。焼成後の絶縁材コーティングが最も簡便な手法であったが、性能的に不十分であったため、ZnO素子内部から表面へ徐々に絶縁層へと変化する界面のない側面絶縁層を形成する技術を完成させた。その結果、放電耐量特性が大幅に向上した。
(3)大口径化及び量産化
ZnO素子の目標とする直径は約φ60mmで、弱電用バリスタに比べて15倍以上の体積が必要だった。大形のZnO素子では、均一な焼結反応をさせることが課題であり、焼成条件の最適化を図った。また、大形化に対応した焼成炉をはじめとする量産設備を導入した。
(4)課電寿命推定法の確立
酸化亜鉛形避雷器には直列ギャップがなく常時系統電圧が印加されるため、課電寿命評価が大きな課題であった。様々な温度での加速劣化試験を実施し、アレニウス則から30年以上の寿命があると推定した。
以上の研究開発を進めた結果、1973年に発変電用φ56mm素子を完成させ、電気学会全国大会で世界初の酸化亜鉛形ギャップレス避雷器の論文を松下との連名で発表した。