公益社団法人発明協会

現代まで

非接触IC カード技術

概要

 非接触ICカード技術とは、ICカードや対応携帯電話を読み取り機(リーダー/ライター)にかざすだけで無線通信を行い、決済や認証を実現する技術であり、交通乗車券や電子マネーとして幅広く使われている。その代表的なものがソニーが開発し、1997年に市場に導入されたFeliCaである。我が国では、2001年11月18日に東日本旅客鉄道(以下「JR東日本」と呼ぶ)がSuicaを発行して以来、急速に普及が進んだ。現在、FeliCaは行政系を除く日本国内の非接触ICカードシステムのほとんどに採用されている。更に、FeliCaの通信方式は世界的にも高く評価されておりISO/IEC 18092として国際標準規格とされた。

 FeliCaの特徴は、①CPUと専用OSにより高速データ受信が可能であり、②暗号による高レベルのセキュリティが確保されていることにある。高速データ受信についてはICカードとリーダー/ライター間での存在確認、認証、読み出し、判定、書き込みのすべての工程が0.1秒以内に行われる。またFeliCaにはマルチアプリケーション機能も搭載されており、複数のサービスを1枚のカードに搭載することができる1。セキュリティについては、セキュリティ評価・認証基準の国際標準であるコモンクライテリア(ISO/IEC 15408)の評価保証レベルを取得している2

 このような特徴を持つFeliCaが最初に導入されたのは香港であった。1994年に香港の交通機関6社によって共同で設立されたクリエイティブ・スター社(現・オクトパスカード社)がFeliCaの採用を決定し、1997年にオクトパスカードとして本格的に導入したのである。我が国では、1998年にICチケットに導入されたことを皮切りに、翌年の1999年には、イーエムオペレーションズ社の実証実験が行われ、FeliCaを搭載した非接触ICカード電子マネーシステムの普及が進んでいった。2001年にはJR東日本の首都圏424駅でSuicaサービスが開始され、それ以来、電車やバスなど他の交通機関への非接触ICカードシステムのサービスが全国に拡大した。現在は、交通機関の乗車券(PASMO、ICOCA等)、電子マネー(nanaco、WAON等)、航空搭乗券、学生証、ポイントクーポンカード等にFeliCaが用いられているほか、モバイルフェリカICチップを埋め込んだ携帯電話による「おサイフケータイ」サービスも普及し、我々の暮らしをより便利なものとしている。2014年現在、FeliCaを搭載している主な非接触ICカード電子マネーは、楽天Edy(楽天エディ)8,500万枚、Suica(JR東日本)4700万枚、WAON(イオンリテール)4000万枚、PASMO(パスモ)2700万枚等が発行されており(日経MJより。WAONのみ2014年4月末時点。その他は2014年11月)、インドネシア、スリランカやバングラデシュ等、海外でも利用されている。


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