現代まで
光触媒
概要
光触媒は、光が当たると触媒作用を発揮する材料で、代表的な物質として酸化チタンが挙げられる。光触媒に太陽光などの光が当たると、「分解力」と「親水性」の2つの機能を発揮する。「分解力」は消臭、抗菌、防汚(セルフクリーニング効果)などに、「親水性」効果は防曇、防汚などに、それぞれ活用されている。
1969年、東京大学(以下、「東大」と呼ぶ)の本多健一と藤嶋昭は、酸化チタンと白金電極を用いた電気化学系に紫外光を照射すると電流が発生し、かつ、水が水素と酸素に分解されることを発見した(「ホンダ・フジシマ効果」と呼ばれる)。1972年、この成果が「Nature」誌に掲載されると、直後に勃発した第一次石油危機もあって、発生する水素が新たなエネルギー源となるのではないかとの期待を集め国際的な注目を浴びることとなった。
さらに1989年、藤嶋と橋本和仁は薄膜上の酸化チタン光触媒の分解性に着目し、これをコーティングすることにより材料に抗菌性を付与できることを見いだした。これを踏まえてTOTOとの共同研究を進める中で、酸化チタンの光誘起超親水化現象を発見した1。これは酸化チタンの表面に光が当たると表面の水ぬれ性が非常に高くなり、水滴が濡れ広がることを意味し、その利用により光触媒がセルフクリーニングや防曇効果を発揮するものであった。こうして、セルフクリーニング機能をもつ建材など新たな製品開発が多くの国で始まった。そして、次々と広範な分野にわたり新たな市場が創出されることとなった。
2013年現在、光触媒の国内市場規模は900億円に達し、海外でもその使用は増大しつつある。
光触媒に関する研究は、現在でも医療分野への応用や汚染土壌等の浄化等新たな活用を求めて多くの研究が進められている。
光触媒(酸化チタン)紫外線照射による水のぬれ性変化
出典:岩田広長「光触媒利用技術の産業化とその市場」産学官連携ジャーナル 9巻4号(2013年)
光触媒の分野別事業規模の推移(国内)
出典:光触媒工業会「光触媒製品の事業規模調査」