公益社団法人発明協会

現代まで

スーパーコンピュータ

概要

 スーパーコンピュータは、一般のコンピュータの数十倍の計算速度を持つ科学技術計算を主目的として開発されたものである。アメリカのCDC社から独立してクレイ社を興したSeymour Roger Crayが1976年に世に出したCRAY-1が商業的に成功した嚆矢である。構造解析や大規模数値解析に基づくシミュレーションが必要な気象予測、原子力、分子科学などの科学分野、また、自動車・航空機設計、建築土木設計など工学分野、更には経済予測などにも幅広い利用可能性を提供するところとなった。

 1970年代から80年代にかけて、富士通、日立製作所、日本電気などの国産コンピュータメーカーは当時世界のコンピュータ市場で「エレファント」と呼ばれたIBMに挑戦し、汎用コンピュータの開発に取り組んでいた。官民協力を含む優れた集積回路の開発、産学共同のプロジェクトの推進、そしてアメリカとの技術提携などを通じた技術力の向上を果たし、世界市場に進出していった。そして、その汎用コンピュータ技術の先にあるスーパーコンピュータにおいても1980年代半ば以降、3社は次々に高性能かつ性能価格比の高い機種を発表し、技術面からもまた商業ベースでも世界市場における地位を確保していった。

 その技術力の高さは、1990年代に入り世界の最先端を占めるまでになった。それはTOP500と呼ばれているスーパーコンピュータの性能評価プログラムにおいて1993年から2000年代初頭までの間において、世界ランクのトップに「数値風洞 (NWT)」、「SR2201」、「CP- PACS」、「地球シミュレータ」と日本製スーパーコンピュータ4台が位置づけられたことに示されている。

 これら最大規模・高性能のスーパーコンピュータ製造能力をもって、各社はその普及版とでも言うべきスーパーコンピュータを数多く世界市場に送り出し科学分野、工学分野の発展に寄与してきた。一方で、それは米国との貿易摩擦にまで展開した。

 そして21世紀においても2011年理化学研究所と富士通による「京」が上記ランクのトップになるなど発展し続けている。日本のスーパーコンピュータの開発は、国や大学の研究機関と民間企業との連携により、先行するアメリカとのし烈な技術競争や貿易摩擦の試練を乗り越え、情報化時代の先端分野を切り開き同時に市場を切り開いた優れたイノベーションである。


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