現代まで
タクロリムス
発明技術開発の概要
タクロリムスが免疫細胞であるT細胞の活性化を妨げる仕組み(作用機序)については、ハーバード大学のスチュアート・シュライバー教授など多くの研究者が取り組んできた。そして、タクロリムスそれ自体には免疫抑制効果はなく、FK結合たん白質(FKBP)という細胞内受容体と結合して作られる複合体が、T細胞への免疫活性化のシグナルを遮断することからその活動が抑制されることを解明した。すなわち、この複合体はカルシニューリンという体内酵素に作用し、その活性化を阻害し、免疫細胞システムから供されるたん白質のインターロイキン2の遺伝子に作用して、これを制御するリン酸化を行わなくさせ、活性化T細胞核内因子(Nuclear factor of activated T-cells)の造成を行う転写を抑止して免疫活動を妨げるというものである。
このような有機化学的な手法と生物分子学的手法との組み合わせによる分子生体内分子の活動を解明しようとする学問的領域はケミカルバイオロジーという新たな分野を展開させることとなった19。タクロリムス関連の学術論文は膨大な数に上っている20。