高度経済成長期
レトルト食品
概要
レトルト食品とは、合成樹脂フィルムやこれとアルミ箔等をはり合わせた光を通さない材質のパウチ(袋)または成型容器を用い、内容物を詰めて完全に密封(ヒートシール)し、加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)を行った袋詰又は成型容器詰食品のことを指す。1968(昭和43)年に市場に登場してから約40年間で、およそ18億1427万個(180g入り換算)、生産総額では約2104億円に上る1。
軽量でその取り扱いや開封が容易な点、短時間で温め可能な点、容器のリサイクル性が容易な点等の商品特性が多くの消費者からの支持を得、消費も大きく伸び、レトルト食品といえば、今や一般の家庭における代表的な食品(形態)の一角を担っている。
レトルト食品の研究開発は1950年ごろの米国にさかのぼるが、一般消費者向けに広く受け入れられる製品化に成功したのは、1968(昭和43)年に大塚食品(以下大塚と略す)が発売した「ボンカレー」が最初である。半透明のレトルトパウチ製品で、パウチの作製、完全密封のヒートシールを実現する充塡機の開発、殺菌温度と圧力とのバランスの最適化等、様々な難点を克服したことで実現した。
更に翌年の1969(昭和44)年には、アルミ箔をしん層とした3層の遮光性のパウチが導入されたことで、衛生性、長期保存性、常温流通による経済性、短時間の再加熱で食卓に供せられる利便性・簡便性が消費者に大きく受け入れられ、レトルト食品飛躍の発端となった。
その後、次々と参入する企業が増え、米飯類、ハンバーグ、ミートソースなど各種のレトルト食品が開発され、近年では100社を超える企業で500種以上のレトルト食品が生産されている2。
レトルト食品の普及・商業化は、日本と同様に湯を使う(ゆでる、蒸すなど)調理法が一般的なアジア中心に広く受け入れられ、多くの国で普及している。
1968年世界初の市販用レトルト食品「ボンカレー」
画像提供:大塚食品