公益社団法人発明協会

高度経済成長期

回転寿司

概要

 日本の寿司は、8世紀以降、長らく発酵食として発達してきたが、江戸時代後期に握り寿司の手法が考案されたことで、新たな食文化として発達をみた。しかし、回転寿司が普及する以前は、その調理は寿司職人の技量に依存するところが大きいことや、価格も材料である生鮮魚介類の質及び市場価格の変動に左右されることから、どちらかといえば高級感のある料理と見られていた。そのため、寿司店で寿司を食べることは「ハレ」の行事と同等に意識され、冠婚葬祭や入学・卒業など、特別な機会に利用される場合も少なくなかった。

 回転寿司の出現は、こうした寿司文化に工場生産的な手法を持ち込むとともに、個人経営が中心であった寿司店にチェーン店経営方式を導入するなどして、寿司をより大衆向きの食品として普及させるきっかけとなったイノベーションである。

 回転寿司の基本的なビジネスモデルは戦後大阪で誕生し、1970年に開催された大阪万博によって一般化したといわれる。そして、2014年現在、回転寿司は4000店以上日本に存在するとされ、その店舗数をみても、日本人の食生活の中で大きな役割を果たしている。

 かつての一般的な寿司店と比較して、回転寿司の特色は主に、以下の四つの点にまとめることができる。①価格帯を事前に明示し、期待した予算内での消費を可能にしたことで、家族や若年層など、多様な所得層、年齢層が寿司を受益できるようになったこと、②ベルトコンベアや皿数の管理システムなどを導入して、極めて安価に寿司を提供できるシステムを構築したこと、③寿司を自動的に顧客の手元に届けるシステムを導入して、提供側の作業待ち時間及び受益側(消費者側)の待ち時間を最小化し、従来の寿司店にはない経済的な効率性を生み出したこと、④従来の寿司店の多くが個人商店であるのに対し、回転寿司店の多くは上場を果たした企業チェーンが運営していることである。

 回転寿司のビジネスモデルは、単に日本国内にとどまらず、今や世界中に普及している。その多くは地域色を強く取り入れ経営も地域資本によるものが圧倒的である。しかし、日本の代表的な回転寿司チェーンも近年急速に海外展開を図りつつある。

元禄寿司1号店

元禄寿司1号店

画像提供:元禄産業


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