高度経済成長期
公文式教育法
概要
戦後、今日に至るまでの間に、我が国ではいくつかの革新的な教育システムが考案され、世界中に広く受け入れられるに至った。音楽・器楽の教育システムとしては、ヤマハ音楽教室やスズキメソードなどが知られているが、これに対して、算数や国語の教育システムとして世界的に有名なのが、ここに取り上げる「公文式教育法」(以下「公文式」と呼ぶ)である。
公文式は、日本公文教育研究会を中核組織とするKUMONグループ(以下「KUMON」と呼ぶ)が提唱している教育法である。1955年、創始者・公文公(くもんとおる、以下「公文」と呼ぶ)によって第1号教室が開設されて以降、独自の教材と教育運営ノウハウをフランチャイズ方式で提供することにより、その規模を急速に拡大してきた。
公文式教育法は、①自学自習、②学習内容の絞り込み、③生徒の能力・進度に合わせた教育、の3点を主な特徴としている。こうしたアイデアは、創始者・公文の少年時代・教師時代の経験を通じて温められ、長男の家庭学習のあり方を模索する中で確立されてきた。学年にとらわれず、全ての学習の基盤となる汎用的能力の養成を目指す公文式は、国家の垣根を越えて世界中で高く評価されており、2013年3月現在、世界の48の国と地域で合計400万人以上の生徒数を抱えている1。図1は、実際に公文式の教室で使用されている教材の見本を示したものである。
図1 公文式教材見本(算数・数学)
出典:公文式ホームページ「公文式の特長」スモールステップの設計<http://www.kumongroup.com/method/index03.html?ID=method_index02>(2014年3月27日アクセス)
本章では、公文式教育法の主な特徴について簡潔に述べた後、公文式教育法のシステムが生み出された経緯について説明する。