公益社団法人発明協会

高度経済成長期

自脱型コンバインと田植機

概要

 農林水産省「農林業センサス2010」によれば、販売目的で水稲を作付けしている我が国の農家の10戸に7.7戸が田植機を、6.1戸がコンバイン(その多くが自脱コンバイン)を保有している。ともに1960年代後半に突然世に出たものだが、今では日本稲作になくてはならぬ存在になった。この2つの発明がなければ、あれほど短期間に農村労働力が都市に集中することはなく、高度経済成長もあれほど迅速には進まなかっただろう。

 大発明はしばしば定説をくつがえして生まれる。田植えの機械化は、それまで非常識とされた稚苗を利用することで達成された。稲刈り・脱穀の機械化は、先行する欧米コンバインの改良でなく、実現困難といわれた日本独自のコンバイン自脱型コンバインの創造に軍配があがった。いずれも丁寧な仕事を愛する日本の農家好みの集約農業に適する作業機である。

 田植機もコンバインも、はじめは少数意見からの出発であった。田植機発明の突破口となったのは、雪深い試験地で開発された室内育苗(箱育苗)法である。この育苗法で育てた稚苗を用いて田植機を発明したのは、農業には無縁の小企業の一技術者であった。一方、自脱型コンバイン開発は、国の試験場の研究者がつくった試作機に始まる。その後、全国の技術者の知恵を集め、やがてそれは歴史的な技術革新に生長した。“少しでも多収に、少しでも省力に”、技術者たちのこの願いが、この2大発明を完成させたのである。

人力1条田植機農研号TM4-1型(カンリウ工業)

人力1条田植機農研号TM4-1型(カンリウ工業)

画像提供:関口正夫


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