本発明は、工作機械の主軸や砥石軸などに使われる静圧軸受装置の動力低減に関係するものです。従来の静圧軸受では回転軸が高速回転したときに、使用する潤滑油の循環流れと乱流化によって大きな動力損失が発生していました。本発明では、軸受内部に流れを整流化、層流化する構造を追加して、軸受の剛性や減衰性、回転精度などを維持したまま、高速回転時の動力損失を低減しています。

　最初に動力損失の原因である乱流状態を正確に把握するために、静圧軸受の流体解析技術の構築に取り組みました。軸受内部の乱流を層流にするための形状は幾通りも考えられ、それらの中から作りやすさと動力低減の両立を図る最適な形状にたどり着くまでが最も苦労した点です。また、高速で回転する軸の抵抗を直接計測する新たな実験装置を開発し、実測値が解析値とほぼ一致する結果を得たことで原理を明確にすることができました。さらに実機搭載に向けては、構造と加工方法を工夫して搭載性と製造コスト低減を実現しました。

　静圧軸受は高い回転精度を長期間維持できる優れた性能がある反面、高速回転時の消費動力が高いという問題があり、動力低減の技術開発を継続的に行ってまいりました。今回の受賞でこれまでの取り組みと開発した技術が認められたことは、大変光栄に存じます。本技術はカーボンニュートラルにもつながる技術であり、これからも社会に貢献できる開発に取り組んでいきたいと思います。本受賞に当たり、ご支援とご協力をいただいた皆様へ深く御礼申し上げます。