本発明のポイントは高容量・長寿命のアルカリマンガン乾電池に組み込まれるガスケット部品の材料として、植物由来の６―10ナイロンの適用に成功したことです。
　従来の６―10ナイロンでは、衝撃や環境試験等で液漏れなどの不具合がありました。本発明では、６―10ナイロンに添加剤を加えて靭性と耐熱性を高め、成形条件を工夫することにより、アルカリマンガン乾電池用のガスケットとして完成させることができました。

　アルカリマンガン乾電池は逆接続などの誤使用をすると内部にガスが発生し、発熱・破裂などの危険性があるため、ガスケットという安全機構部品が入っています。
　当初、植物由来の６―10ナイロンを安全機構部品に使うという発想は、長期信頼性において難点があると思われており、客先においても不安視されていました。こうした状況から度重なる試作と評価を繰り返し、３年がかりで実用化に漕ぎ着けるまでには、様々な苦労がありました。

　この度、文部科学大臣賞という大変名誉な賞を賜り、誠に有難うございます。
　社員一同、思いもよらぬこの賞に歓喜しております。現在、国内で約60％のシェアを有し、海外においても徐々に増やしております。
　本発明のメリットは、従来のガスケット材料である石化燃料プラスチックを植物由来に置き換えていくことで、原材料の製造プロセスにおけるＣＯ２を大きく削減できることです。商品からは見えない技術に、社会的貢献という価値を見出して、高く評価していただいたことを嬉しく思います。
　これを励みに、プラスチック射出成型業という立場から、社会貢献できる技術開発を目指していきたいと思います。