スタッキングチェアーは機械的機能を備えたオフィスチェアーと異なり、シンプルな構造の中で機能を満たす必要があります。収納性向上のためのスタック性能、扱い易くするための軽量性、公共空間など不特定多数者の使用に耐えうる強度性能、明快な取扱い方、何より“いす”としての良い座り心地があります。それらの各要素を極限まで追求した、シンプルで無駄のない建築的なデザインは機能美として、欧米でも高く評価されています。

スタッキングチェアーとしての必要機能を限られた部品、コストでどう理想のデザインを実現するかにありました。座部は座り心地良く、スタック性能を向上させるため、薄く、軽量化するために座面に合理化された一体成型のメッシュ素材を用いております。そういった新技術を研究しながら、世界水準の試験検証を繰り返し理想的なスタッキングチェアーのデザインを完成させてきました。更に近年では全ての樹脂部品、メッシュを100％再生材で実現し、環境面でも評価を得ております。

意匠として、今回の特許庁長官賞をいただき、大変光栄に嬉しく思っております。スタッキングチェアーとしての限られた条件の中での理想を一つ一つ解決し、シンプルで新しいデザインに挑戦して参りました。この度このような賞をいただけたことは、私自身の励みにもなり、また、意匠における商品開発の可能性を意味しているものと思います。今後も機能美を追求し、新しい意匠を発信、提案していきたいと思います。有難うございました。