【平成23年度中部地方発明表彰】
特許庁長官奨励賞
発明の概要について教えてください
MRSA感染症は眼科領域においても適切な治療法が無く、放置すると重篤化し、時には失明を招く疾患です。問題を解決すべく、特効薬である塩酸バンコマイシンを含有した眼軟膏を創製しました。従来の注射剤治療の問題点であります眼組織への薬剤移行を飛躍的に改善し、点眼液として自家調整使用の液剤の組織刺激性及び脆弱な保存安定性の問題点も解決されました。本発明によりMRSA眼感染症に有効性・安全性に優れ、保存安定性も確かな薬剤が提供可能となりました。
苦労した点はどこでしょうか
点眼液剤の研究からスタート致しましたが、薬剤の安定性が悪く、塩酸バンコマイシンの水溶液中での物理的・化学的動態に起因すると判断して断念し、次いで凍結乾燥製剤を検討しましたが、利便性の点で中止しました。その後、軟膏剤で高い安定性を有する事を見出し、更に水分吸着や温度について慎重に検討を加え、同時に薬物の組織内移行の研究のため種々の濃度の軟膏剤を製造し、動物試験等により最適な有効性・安定性を示す薬物濃度範囲を見出すのに苦労致しました。
受賞のご感想をお願いします
名誉ある賞を戴きましてありがとうございます。本薬剤の対象患者は少ないですが、治療に難渋されている方々には是非とも必要な薬剤であると言う社会的貢献を第一義と考え発明に至りました。望外の喜びと考えます。製品化においては、厚生労働省のオーファンドラッグ制度を利用させて戴き、種々のご助言を賜りましたお陰です。厚く御礼申し上げます。又、各種試験に御協力・御助言を戴きました眼科臨床の先生方、及び微生物学・感染症学等々の基礎研究の先生方に御礼申し上げますと共に、共同研究に精を出して戴いた社内の皆様その他お世話様になりました企業の皆様に厚く御礼申し上げます。
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