公益社団法人発明協会

安定成長期

スタチン

概要

 スタチンは、HMG-CoA還元酵素を阻害して血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を効果的に低下させる、高脂血症治療薬の総称である。

 スタチンは、体内でのコレステロール合成を、鍵段階のHMG-CoA還元酵素を阻害して強力に低下させる。ヒトや動物の細胞にはコレステロール量を一定に保つ仕組みがあり、コレステロール量が低下すると、受容体を増やして血液中からLDLコレステロールを細胞内に盛んに取り込み、その結果、動脈硬化の原因となる血中のLDLコレステロールが効果的に低下する。世界で最初のスタチンであるコンパクチンは、1973年、当時、三共(現 第一三共;2005年に経営統合により発足、以下「三共」と呼ぶ)に在籍した遠藤章博士(以下「遠藤」と呼ぶ)により青かびから発見された。この発見を契機にしてなされた国内外の研究により、コンパクチンの革新的作用メカニズムと高コレステロール血症への劇的な効果が明らかにされたことは、世界の多くの科学者そして医薬品企業に、高脂血症治療に向けたスタチンの開発に取り組む展望を与えるところとなった。その結果コンパクチンと基本骨格を同じくする様々なスタチンが開発され、有効性と安全性の高さが証明され、今では巨大市場を形成する医薬品群となっている。日本でも三共によるプラバスタチンのような優れた医薬品が開発され、今日に至っている。

 スタチンに属する医薬品は現在、世界で多くの患者に投与されており、テキサス大学のブラウン教授(Michael S. Brown、以下「ブラウン」と呼ぶ)とゴールドスタイン教授(Joseph L. Goldstein、以下「ゴールドスタイン」と呼ぶ) によってスタチンは「コレステロールのペニシリン」と呼ばれている。


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