公益社団法人発明協会

安定成長期

3.5インチフロッピーディスク

概要

 3.5インチ・フロッピーディスクシステム1は、磁性体を塗布した可とう性(フレキシビリティ)をもったディスクを用い、これを90㎜幅のプラスチックケース内に収納した画期的な外部記録装置2であった。ディスクの中心部には金属製のハブが備えられ、高速の位置決めを実現した。ディスクを覆うプラスチックケースの内面にはライナが備えられ、読み取り・書き込みを行うために開けられたヘッドウインドウはシャッターにより保護されていた。

 パソコンが登場した当初、オーディオ用コンパクトカセットテープ装置などが記録装置として利用されたが、パソコンの利用が本格化すると、それまでの記録装置ではメーカーやユーザーの要求を満足することができなくなり、フロッピーディスクが注目されるようになった。パンチカード入力に代わるものとして開発された背景をもつフロッピーディスクは、紙製のジャケットに入れられた8インチ又は5インチのものが中心で、その普及のためには更なる小型化が求められていた。同じ時期、北米を中心としてオフィス・オートメーション(OA)の波が急速に広がっており、コンピュータに不慣れなオフィスワーカーが無理なく利用できる記録装置の登場が求められていた。

 このような状況のもとで、ソニーが1980年に開発した3.5インチ・フロッピーディスクシステムは、1981年にまず英文ワードプロセッサー「シリーズ35」に採用されて米国市場に投入され、その翌年にはパソコン「SMC-70」に搭載されて日本市場にも登場した。コンパクトで扱いやすい3.5インチ・フロッピーディスクシステムは、急速に台頭していたシリコンバレーのパソコンメーカーにも大きな影響を与え、1983年にヒューレト・パッカード社が自社の新しいパソコン「HP-150」に搭載したのに続き、その1984年にはアップルコンピュータ社(現「アップル社」)も新たに開発した「Macintosh 128」に搭載して一大ブームを引き起こした。

 3.5インチ・フロッピーディスクシステムは、小型ディスク装置の激しい標準化競争を制覇し、1984年にはISOの国際規格として認定された。その後、IBM社が自社のパソコンへの搭載を開始するとともにその普及は急速に進み、パソコンに標準的に備えられる記録装置の地位を獲得した。このシステムを主導した日本製の小型フロッピーシステムの需要は急増し、1989年から1996年までの8年間のフロッピーディスク(メディア)出荷量は127億枚、ディスクドライブも1億2000万台が出荷された3。日本で誕生した3.5インチ・フロッピーディスクはその後のパソコンを変えた。

図1

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画像提供:ソニー


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