公益社団法人発明協会

ネオジム磁石

概要

 ネオジム磁石(Nd-Fe-B磁石)は、ネオジム・鉄・ホウ素の三元素から成る永久磁石であり、同じ永久磁石としてそれまで民生・情報電子機器に用いられていたサマリウム・コバルト磁石の2倍近い磁力を有している。このような特性から、ネオジム磁石は「世界最強の磁石」と称されることが多い。

 ネオジム磁石は、1982年に佐川眞人(以下「佐川」と呼ぶ)とゼネラル・モーターズのJohn Croat(以下「Croat」と呼ぶ)によりそれぞれ独立に発明され、翌1983年には住友特殊金属(現・日立金属)、1986年に米国Magnequenchによってそれぞれ製品化・量産化された。それ以来、ネオジム磁石はサマリウム・コバルト磁石を代替する形で、その生産量を拡大し続けてきた。ネオジム磁石の世界生産量は2000年に年間1万トンを超え、2013年には年間約3万トンに達している1

 ネオジム磁石の用途は多岐にわたる。ネオジム磁石が市場に導入された1980年代中盤、わが国では、小型ハードディスクドライブの回転モータやヘッドアクチュエータに用いられた。この適用は、もともとサマリウム・コバルト磁石を製造していたメーカーが、ネオジムがサマリウムよりも廉価な元素であり、かつ磁気特性にも優れていることを知り、サマリウム・コバルト磁石に代替するものとして使用するようになり、急速に普及したものである。また1990年代からは、車載用モータや白物家電用モータ・コンプレッサへのネオジム磁石の適用が検討され始め、現在ではこれらの製品を含む幅広い分野で用いられている2。ネオジム磁石は、幅広い産業で欠かすことのできない「基幹部品」となっている。

 加えて、ネオジム磁石は環境問題にも一定の貢献を果たすものと期待されている。電力に着目すると、一説では世界の電力需要の中でモータを使用する機器の占める割合は、2005年の日本国内電力需要でも57%と高い3。このモータについて、従来型からネオジム磁石を用いた高効率モータへの置き換えが進めば、相当の電力節約につながることが期待される。またネオジム磁石は、温暖化対策・新エネルギー技術として急速に普及している風力発電に広く使用されているほか、ハイブリッド自動車や電気自動車のすべてに使用されるなど、省エネルギー及び二酸化炭素排出量削減への貢献が期待されている。


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