公益社団法人発明協会

高度経済成長期

レトルト食品

発明技術開発の概要

 レトルト食品の容器には、包装形状の上から、四方がシールされ、食品を袋状の容器に詰めるパウチ状(軟包装袋:Flexible Pouch)のものと、トレーやカップ状の(半剛体の)成形容器の2種類に大別できる。また、使用する材質に応じ、アルミ箔等の金属箔により外部の光を遮断する不透明タイプと、中味の見える透明タイプの2種類がある。

 このように、使用するプラスチックの種類、アルミ箔の有無によって、容器としての性能が異なるため、製品の保存性、殺菌条件、輸送保管条件などを考慮し、それぞれの用途に応じ選択する必要がある。

 以下では、ボンカレーに使用され、現在でも製品の種類や生産量も多く、レトルト食品の主流を占めているパウチに関して紹介する。

 パウチの一般的なラミネート構造は、外表面に当たる表基材(ベースフィルム)、内面にありヒートシール用のフィルム(シーラントフィルム)、両者に挟まれ、酸素・水蒸気・光等の遮断を担う中間基材(バリヤー性サンドフィルム)からなる多層構造である。フィルム包装には、ヒートシール性のあるフィルム(≒シーラントフィルム)が用いられており、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムなどがその代表例である。

 

レトルト食品の容器

レトルト食品の容器

出典:日本缶詰びん詰レトルト食品協会「みんなのレトルト」(http://www.retortfood.jp/about/production.html)

 日本でのフィルムによる食品のフレキシブル包装は、塩酸ゴムとセロファンによる包装からスタートした。その後、各種プラスチックフィルム(PVC、PE、PP、PVDC、ナイロン、EVOH)へと開発の中心が移行していった。この材料開発と並行して、押出コーティング、ドライラミネ-ション、共押出ラミネーションといった製法(ラミネ-ト技術)自体も進歩を遂げたことにより、多層フィルムを用いた食品包装技法が確立された。

 その中でも、レトルト包装はレトルト食品という新しいジャンルを形成した技法といえる10

 レトルト食品技術の黎明期は前項でも触れたが、アルミ箔タイプのレトルトパウチの初期のシーラントフィルムとしては、耐衝撃性の向上に強みを発揮する材料(HDPE)が使用されていたが、ヒートシール強度や耐熱性の面では十分でなかった。現在では、これらの要求性能に応え得る無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)が使用されている。

 また、レトルトパウチは材料劣化防止の観点から、光と酸素それぞれの透過性克服が開発の主要課題であったが、新しいタイプのレトルトパウチとしては、酸素吸収剤を応用したタイプのものや、ガスバリア材に透明蒸着PET フィルムを適用したタイプが登場している。

 さらに、平袋を紙のカートンに入れる形状からスタートしたパウチも、外装カートンなしのスタンディングパウチのタイプが多く商品化されるなど、外形面からも機能性向上が図られている。

 なお、「ボンカレー」に関していえば、2003 年に電子レンジ加熱対応の「ボンカレー」が発売され、2013年には箱ごと電子レンジ調理ができるまでに進化している。従来のレトルト食品は、パウチの材料として用いられているアルミ箔が、電子レンジによる加熱(≒マイクロ波の照射)の障害となってしまい、中味を取り出さないと加温できない状態にあった。そこで、アルミ箔の代わりに、マイクロ波で加温可能な中身の保存性や強度に優れた特殊な材質へ変更すると、今度は蒸気によるパウチの膨張という問題に直面する等、試行錯誤を要したが、加熱により生じる蒸気を自動的に逃がす物理的な構造を導入することで解決している。

 このように、レトルト食品関連技術の構成要素の一つであるパウチ技術だけを取り上げてみても、レトルトカレー誕生から半世紀近くたった今なお、進化を続けている。

2017年現在の「ボンカレーゴールド」

2017年現在の「ボンカレーゴールド」

画像提供:大塚食品


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