公益社団法人発明協会

全自動横編機

概要

 島精機製作所 (以下「島精機」と呼ぶ)は、社長島正博(以下「島」と呼ぶ)を中心に1960年代初頭の手袋の自動編機の開発に始まり、1978年にはニット製品全般に及ぶコンピュータ制御式自動横編機の開発をなしとげ、この分野のデジタル革命をいち早く実現した。その進化は更に続き1995年には完全無縫製型横編機の開発にまで至っている。島精機の製品は常に時代の変化、要請に機敏に対応するものであり、コンピュータ制御式自動横編機は、ニット産業をして石油危機以後の大量生産型経済成長から安定成長下の多品種少量生産型への切り替えを可能とした。さらに1995年の完全無縫製型横編機は、情報化時代の到来によって生じたデザインインの必要性やグローバル化時代の繊維産業が抱えた産業空洞化等の課題に挑戦した繊維機械の画期的なイノベーションとなった。この優れた技術開発や機敏な経営改革は、島の手腕に負うところが大きい。島は10代において100に及ぶ発明を行うとともに、20代前半で起業し、数々の経営難を克服して上記の製品の多くを自ら設計、製作していった。2012年、米国の繊維歴史博物館は島に米国人以外では初めての殿堂入りの栄誉を与えている。

 島精機と全自動横編機のイノベーションの特色は、次のように整理できる。すなわち、(1) 発明の端緒を、企業家の個人的な活動に求めることができること、(2) 企業のキャッシュ・フローを定期的に潤すコア技術に拘泥することなく、果敢に新技術に挑み新製品を開発してきたこと、また (3) 単なる自動横編機というハードウェアの開発に留まらず、それを使いこなすためのデザインシステム、編成技術、ノウハウ、デザインなどのソフトウェア面での開発を連続して行うことで、主な利用顧客であるファッション業界のユーザーに新しい価値を提供することができたこと等が挙げられる。

コンピュータ横編機SNC

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