公益社団法人発明協会

戦後復興期

フェライト

発明技術開発の概要

 フェライトは材料としての絶縁抵抗が大きく、ほぼ絶縁体に近いことから、電流をほとんど流さない。そのため、高周波を利用した機器につきものの、うず電流によるコイル加熱を抑制することができ、数百MHzの高い周波数帯まで使用できるという優れた性質をもっている。高周波機器のコイルに用いるには最適なデバイスといえる。

 また、フェライトの特徴は、組成の組合せ[例えば、Fe2O4と結びつく原子マンガン、コバルト、ニッケルの組合せ、いずれもフェライトの種類の一つ]によっては、優れたジャイロ磁気特性や電波吸収特性、光学特性等も得ることができる。

フェライト分子構造

フェライト分子構造

画像提供:TDK

 また、フェライトの特性としては、磁気面にとどまらず、耐摩耗性、耐食性、機械的特性や熱的特性等も挙げることができ、そのことが、電子機器の小型化、高性能化において重要な役割を果たしてきた。

 このように、フェライトの特徴はその強い磁性と絶縁性のみならず多様な特性にあり、そのことがエレクトロニクス産業で長期にわたり幅広い製品に利用されてきた大きな理由といえる。

 フェライトは、磁気的特性の一つである保持力により、ソフトフェライトとハードフェライトの2種に大別できる。ソフトフェライトは、透磁率(その物質がどれだけ磁力線を内部に取り込みやすいか)が非常に高く、保磁力が非常に小さい点が特徴で、コイルやトランスの心材(コア)として使われる。一方、ハードフェライトは、残留磁束密度が高く、保磁力が非常に大きい点が特徴で、主に強力な磁石として使われる。その特性は多彩で、製品への適用範囲も極めて広い。

 ソフトフェライトの代名詞であるコイル・トランスは、フェライトコアを利用した最も基本的な適用例で、各種トランス、チョークコイルとして、テレビ、ビデオ、パソコン、インバータ照明機器、産業用制御機器、通信用等、様々な電子回路に組み込まれている。透磁率・温度特性・機械特性等、様々な視点から現在も開発が進められ、フェライトセラミックの発展を支えている。

(図3)トランス生産数推移

(図3)トランス生産数推移

機械統計年報(経済産業省)より作成

 ハードフェライトは、その多くが自動車向けに利用されてきた(1999年時点では生産量の3分の1以上が電装部品用)。低コストと信頼性の双方が要求される自動車のDCモーターの製造において、そのいずれの特徴も有するフェライト磁石は欠かすことのできないデバイスである。近年は更に磁気特性の高い希土類金属磁石(ネオジム磁石等)も登場しているが、フェライト磁石も性能向上・モーターの小型・軽量化、高性能化が平行して進められている。

 

 (本文中の記載について)

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