公益社団法人発明協会

戦後復興期

溶接工法ブロック建造方式

発明技術開発の概要

 溶接継手構造への転換により生じる問題点は、溶接により船体構造上に生ずる脆性破壊現象であり、この回避と溶接入熱による変形現象防止の究明が必要であった。これらの問題点の検討は、大学研究者を中心に溶接研究委員会で進められた。脆性破壊問題は、第二次大戦中の米国で生じた多数の溶接船の事故の原因であった。日本と同様に米国でも、戦時中、大量の全溶接構造船を建造した。2500隻を超える1万トン級の貨物船・タンカーを建造したが、そのうち200隻以上の船が溶接継手からの脆性破壊による折損破断事故を起こし、多数の沈没事故につながった。この事故に関する米国内の調査資料は、溶接継手の欠陥などの要因もあるが、使用鋼材の品質問題に重要な原因があることを示していた。全溶接船に使用する鋼材の品質問題を解明するには、溶接研究委員会のみではなく、鉄鋼業界や船級協会、関係研究機関を含めた研究が必要であることを運輸省船舶局長が表明し、「造船用鋼材研究会」を発足させた。この研究会の発足を契機に造船溶接用鋼板の含有元素成分や脱酸方法などを鉄鋼業界と協議することによって改良溶接用鋼板が生まれた。しかし、この改良溶接用鋼板ではまだ、日本の造船技術者に溶接継手を100%の導入させるには不十分であった。低温時に事故が起こる例が多くあり、低温を考慮した溶接用鋼材の品質評価確立がまだできていなかったからである。そこで1959年、各国船級協会間で、低温時の使用要件を満たす統一規格の制定が行われた。統一規格には鋼材の低温時の亀裂進展を阻止するじん性(靭性)を判断できるシャルピー衝撃試験の実施が制定され、使用鋼材の信頼性が急速に高められた。この統一規格の制定により全溶接船の建造が加速し、1960年代前半には完全に全溶接構造となった。

 溶接による事故要因が解明されるとともに、造船建造に大きな利点となるブロック建造法導入の検討も、業界の建造担当技術者を中心に鋼船工作委員会において進められた。鋲接工事では少数構造部品ごとに船台上で鋲接作業を行い船体の組立てを行う。一方、溶接継手の場合は、地上の平坦な場所で大きなブロックに仕上げられるので、船台上での作業量を大きく削減できる。この工法を進める上で重視すべき点は、地上で完成させるブロックの仕上がり精度である。ブロックの仕上がり精度を維持するには、工程ごとの精度管理が必要となる。ブロック工法構造部品の加工精度向上を目指し、鋲接時代に行っていた現尺切断加工図法に代わる縮尺切断加工図法を採用することとした。初期の時点では10分の1縮尺図面を作成、その図面を写真フィルムに撮り、そのフィルムを用い切断鋼板上に、実尺輪郭線を投影し切断する方法とした。この考え方が現在のデジタル制御方式となっているNC切断方式につながっている。いわゆる切断形状表示精度が格段に向上するとともに、作業効率向上も大きかった。さらに、1960年代初期にはコンピュータの実用期に入り、曲面の展開作業などにも一部の企業ではコンピュータの適用を始めた。その後、コンピュータの性能向上や切断機器類の開発によって、1970年代には、切断部材の形状情報を入力し、直接ガス切断工程に入るNC切断装置が広く活用されるようになった。

 その他、ブロックを組み上げる順序を指示する作業施工図の作成は、作業効率と仕上がり精度面の向上に大きく寄与した。また、作業員の手溶接を機械化する方法も広く研究が進められた。

 溶接工法ブロック建造方式に必要となる組立てスペースは、雨天時の作業環境を良好にする建屋内での作業が望まれた。風雨などの外的要因が溶接品質の低下を起こすからである。組立てスペース用建屋の設置は、従来の造船所設備配置に比べ作業環境を大きく変え、作業効率向上にも大きな影響を及ぼした。

 

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