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令和5年度近畿地方発明表彰

中小企業庁長官賞

蛍光X線分析用点滴乾燥試料保持具(特許第3793829号)

【大阪発明協会】

森山 孝男

株式会社リガク プロダクト本部
SBU XRF EDXグループ 主任技師

実 施 功 績 賞

川上 潤

株式会社リガク 代表取締役社長


 本発明は、簡便性、迅速性、及び再現性に非常に優れた非破壊の元素分析手法である蛍光X線分析法(以下、XRF)において、従来から使用されている点滴乾燥試料保持具の検出下限を一桁改善する技術に関するものである。
 XRFにおいて検出下限(LLD)は「LLD=3×a×σBG」で定義されている。LLDを改善するためには、σBG:バックグラウンド統計誤差と a:検量線の勾配を小さくする必要がある。従来品に使われていたろ紙材料の保持具を薄く設計することで、保持具から発生する散乱X線を大幅に低減し、σBGを限りなく小さくすることが可能となった。さらに点滴部を親水性吸収材、保持部を疎水性フィルムとすることで、溶液の表面張力を応用し、点滴量を増大させることができ、これにより溶液の濃縮率が向上し、aが改善された。定義式のσBG、a に注目し、点滴乾燥試料保持具を改良した結果、従来品と比べLLDを一桁以上改善できた。
 本発明製品を用いることで、環境分析における有害微量元素の高感度分析が可能となり、また、それ以外の元素についても高感度での分析が実現していることから、各種製品における様々な微量元素の品質管理に使用されている。本発明製品は海外へも多く輸出されており、多くの学術学会・学術雑誌等で本発明製品を用いた分析結果が報告されている。

発明した点滴乾燥試料保持具 写真は500μL点滴時で、乾燥後、測定に供する

発明した点滴乾燥試料保持具
写真は500μL点滴時で、
乾燥後、測定に供する

 
発明品と従来品の定性スペクトル比較(縦軸Logスケール。20ppm含有マルチエレメントの原子吸光液を200μL滴下)

発明品と従来品の定性スペクトル比較
(縦軸Logスケール。20ppm含有マルチエレメン
トの原子吸光液を200μL滴下)

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