日本弁理士会会長賞
車の燃費と安全性を向上する超高強度薄鋼板(特許第6388085号)
【広島県発明協会】
吉岡 真平 |
JFEスチール株式会社 スチール研究所 薄板研究部 主任研究員 |
小野 義彦 |
JFEスチール株式会社 知的財産部 知財技術室 主任部員 |
飛鷹 健太 |
JFEスチール株式会社 西日本製鉄所 冷延部 冷延技術室 主任部員 |
山口 竜介 |
JFEスチール株式会社 西日本製鉄所 薄板商品技術部 自動車室 主任部員 |
実 施 功 績 賞
北野 嘉久 |
JFEスチール株式会社 代表取締役社長(CEO) |
本発明は、引張強さが1320MPa以上の超高強度でありながら遅れ破壊(※1)に対する耐性を飛躍的に高めた自動車用鋼板に関するものである。
従来は耐遅れ破壊特性の確保に有利な、熱間プレス工法(※2)による超高強度鋼板が使用されていたが、生産効率が低く、部品製造コストが高いという欠点があった。本発明の鋼板では、当社独自の水焼入れ方式を適用した連続焼鈍プロセスによる超急速冷却技術を駆使し、遅れ破壊に悪影響する合金元素を低減し、金属組織の均一性を極限まで高めることに成功した。これにより自動車用鋼板として実用可能なレベルにまで耐遅れ破壊特性を引き上げた。また、均一で硬質なマルテンサイトとする組織設計は、衝突性能に直結する降伏強さの飛躍的向上ももたらした。1470MPa級鋼板の場合、現在主流である980MPa級鋼板に比べ約2倍の降伏強さを有するため、等価の衝突性能を維持して板厚を薄くでき20%以上の軽量化が実現可能となる(図)。
本発明の適用により、熱間プレス工法で必要な専用設備を導入することなく、安価で広く普及している冷間プレス工法で超高強度部品を製造できるため、自動車メーカー各社で採用が拡大している。今後、自動車用鋼板の主流となって車の燃費と安全性の向上に寄与するものと期待される。
※1 車使用時の腐食等で鋼中に侵入した水素により部品が突然破壊する現象。水素脆化とも言う。
※2 素材を高温に加熱し軟質化した後、金型で成形と冷却を同時に行い高強度部品を得る工法。
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