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平成29年度中部地方発明表彰

特許庁長官賞

溶接部の耐食性と低温靭性に優れる電縫鋼管(特許第5516680号)

[愛知県発明協会]

豊田 俊介

一般財団法人金属系材料研究開発センター 磁性材料研究部長
(JFEスチール株式会社 組織人事部付出向)

岡部 能知

JFEスチール株式会社 スチール研究所
鋼管・鋳物研究部 主任研究員

米本 篤志

JFEスチール株式会社 知多製造所 商品技術部
主任部員

実 施 功 績 賞

柿木 厚司

JFEスチール株式会社 代表取締役社長


 本発明は、水素を原因とする割れ性(耐HIC(Hydrogen Induced Cracking)性)と低温靱性に優れる溶接部の信頼性の高い電縫鋼管である(図1)。電縫鋼管の溶接部における酸化物の影響に着目し、最新の数値解析法や溶接現象観察法を構築して研究し、耐HIC性と低温靱性に優れた電縫鋼管を発明した。電縫溶接時に溶接部に発生する酸化物の粘度を低減すれば、溶接部に残存することなく酸化物が排出されやすくなり溶接部の信頼性は飛躍的に向上し、さらに酸化物の粘度は溶接部の介在物に含まれる添加合金元素量と良い相関があることも見出した(図2)。これらの新たな知見に基づき電縫鋼管に使われる鋼板の化学組成と電縫鋼管の溶接条件の適正化を行い、上述の特性を全て満たす電縫鋼管を実現した。発明鋼管により、極寒冷地でのエネルギー開発の促進や鋼管の施工コストの削減を達成するとともに、地球環境の保全の観点からもCO2削減に貢献している。現在、世界各地のパイプラインへの発明鋼管の適用が進んでおり、世界のエネルギー安定供給に大いに貢献している。


従来鋼管と発明鋼管の比較

図1 従来鋼管と発明鋼管の比較

電縫溶接部の耐HIC性と靭性に及ぼす電縫溶接時に生成する酸化物の粘度の影響

図2 電縫溶接部の耐HIC性と靭性に及ぼす
     電縫溶接時に生成する酸化物の粘度の影響

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