文部科学大臣発明奨励賞
紙幣の追跡方法(特許第4349849号)
【愛知県発明協会】
影広 達彦 |
株式会社日立製作所 中央研究所 情報システム研究センタ 知能システム研究部 主任研究員 |
永吉 洋登 |
株式会社日立製作所 中央研究所 情報システム研究センタ 知能システム研究部 研究員 |
酒匂 裕 |
学校法人法政大学 情報科学研究科 教授 |
上村 敏朗 |
株式会社日立製作所 モノづくり技術事業部 開発・設計プロセス改革センタ 主管技師 |
長屋 裕士 |
日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 ハード開発センタ センシング第1開発部 第1開発課 課長 |
実 施 功 績 賞
堀 一哉 |
日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 代表取締役社長兼CEO |
本発明はATM(現金自動取引装置)における紙幣追跡を高精度に行うための発明である。紙幣追跡とは、手元にある紙幣を、ATM入金時に採取しておいた紙幣情報と突き合わせ、特定する処理のことを指す。中央銀行や警察での鑑定の結果、偽造と判明した紙幣について紙幣追跡を行えば、偽造紙幣の使用者が誰であったかを特定でき(図1)、偽造紙幣の抑制につながる。この方策は、欧州にて法制化されている(Article6)。
従来手法では、紙幣追跡を、紙幣の通し番号(記番号)を用いて行っていたが、偽造紙幣には同一の記番号を持つものが多いこと、同一記番号の真正紙幣も存在すること、記番号が汚れて読めない場合があることなど、個々の紙幣に対応する偽造紙幣使用者を特定することが難しい状況があった。
そこで本発明では、画像同士を比較する方法を採用いた。しかし画像信号にはばらつきがあるため、高精度な紙幣追跡が困難であった。本発明では、装置の個体差によるばらつきを解消し(図2(A))、撮影毎に発生する画像ばらつきを許容可能な突き合わせ方式(図2(B))を用いることで、高精度な紙幣追跡を可能とした。
2006年3月にはドイツ連邦銀行により実施されたArticle6認定試験に臨み、本発明の効果によって100%の追跡成功率を達成し、合格した。このArticle6認定取得に加え、過酷な紙幣状況に対応する識別技術、新たな種類の紙幣への即応技術を併せることで、還流型ATMの総合的な信頼度を高めることに成功し、グローバル展開を可能とした。世界中の人々の利便性の向上、現金取扱い業務量の減少による経済の効率化、紙幣取扱いに関する安全性向上に貢献した。
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